麗しの彼を押し倒すとき。
案の定、開けた視界の先には、騒がしくBBQの準備をする幼なじみ達の姿があった。
彼らは近づく私と椿には気づいてないらしく、着々と鉄板や炭やらを運び、その場に設置している。
楽しそうなその姿に自然と笑みがこぼれて……ふと、いつもより1人多いことに気がついた。
なっちゃん、波留くん、凪。そして横にいる椿。
私を含めこの場にいるのは5人のはずなのに、数えたら6人いる。
「……椿、あの人」
誰?そう言い切る前に、背を向けて作業していたその人が振り返った。
筋の通った綺麗な鼻と、優しいアーモンド型の目が印象的。
「おーい!」
漆黒の髪をワックスで少し遊ばせた彼は、白い歯を見せるとこっちに手を振った。
制服を着ていないことからして、愛蘭高校の生徒でないのは分かる。それに垢抜けたその姿から、私達より少し年上のようにも見える。
「もしかして椿の横の子……柚季!?」
密かに彼を分析していると、突然名前を呼ばれて驚いた。
嬉しそうに近づいてくる彼は、「柚季!柚季だろ?」と少し興奮気味で、その勢いに思わず後退りしそうになる。
そんな私を見た椿が、「あいつ、兄貴」と短く答えをくれたおかげで、彼の正体が判明した。
「え、まさか梓(あずさ)くん!?」
「当たりー!柚季ーおっきくなったなー」
「……わっ」
暖かい腕に包み込まれ、懐かしい匂いに心臓が心地よく高鳴った。