麗しの彼を押し倒すとき。


「皮剥き係に降格」

「……はい」


ピーラーと人参を手渡され、なんだか申し訳なくなる。


……そう、私は料理が少し苦手。

いや、多分結構…苦手なんだと思う。

椿の手元を見ると均一の大きさで、綺麗に野菜たちが姿を変えていく。


私より女子力高いんじゃないか。

自分の女としての魅力は一体なんなんだ、そんなことを考えるとため息しか出てこない。


「柚季、剥きすぎだ」

「え?」


違うことを考えていたからか、私の持っていた人参は肉付きが減り、可哀相に貧弱な姿になっていた。


「ご、ごめん……」


このままじゃ皮剥き係までクビにされる!そう思って恐る恐る椿を見ると、彼は意外と怒ってはいなかった。

それどころか私の必死な顔がおかしかったのか、笑をこらえるように口元をむぐむぐと動かしている。


「あーだめだ…面白すぎる」


しかしついに堪えられなくなったのか、小さく呟いてから彼の笑いのダムが決壊した。

拳を口元に当てながら爆笑する姿は少し可愛くて、笑われてるのにこっちまで面白くなってくる。



「っふふ……もう、そんな笑わないでよ」

「ははっ、だってお前それ、人参ガリガリなってんだろ」

「あははっ…もう、笑わせないで、お腹痛い」

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