麗しの彼を押し倒すとき。



「柚季、これは灰?」

「玉ねぎ!」

「んじゃこっちは炭?」

「かぼちゃ!」


太陽が沈みすっかり暗くなった空の下、私はトングで黒くなった椎茸を挟みながら叫んだ。


……こんなはずじゃなかった。

網の上で出来上がった黒い物体の数々に、思わず深いため息が出る。


頑張って火を起こしてくれたみんなのために、張り切って野菜を焼き始めた、それまでは良かった。

けれど野菜たちはあれよあれよと日焼けしていき、私がひっくり返す頃にはこんがり小麦色を通り越し、真っ黒焦げになってしまっていたのだ。


「ボケな上に料理できないって…救いようないね」


割り箸で丸焦げになった人参を挟みながら、なっちゃんが最高にトゲのある言葉を私に落とした。


あぁ…ダメだ。いつもならここで言い返すところだけど、今回ばかりはすぐに立ち直れない。

人参からしてみれば、一生の終わりでガリガリにされ、丸焦げにされ、それは最悪な最期だっただろう。


「ゆ、柚季っち、やっぱりBBQは男の仕事だよ。ごめんね熱かったでしょ?」


波留くんが優しく声をかけてくれる。

けれど、その手はさりげなく私のトングを奪い、さっさと焼き作業を引退しろと告げてくる。

< 155 / 162 >

この作品をシェア

pagetop