麗しの彼を押し倒すとき。


「お前ら、肉ばっかじゃなくて野菜も食え!」

「げ…梓入れすぎ!」

「えー俺ピーマン無理。波留食べてー」

「おまっ…ピーマンくらい自分で食えよ!」


結局、あれから梓くんが率先して焼き作業をしてくれたおかげで、何とかBBQは順調に進んでいた。

すっかり暗くなった空の下で繰り広げられる肉の争奪戦に、必死な姿がおかしくて思わず笑いが漏れる。



「みんな必死だね」

「あぁ」

「参加してこなくていいの?」


隣に座っていた凪に聞くと、「面倒くさい」そう言ってウインナーをかじった。


……やっぱり、まだよくわからない。

ある程度彼らと過ごすうち、一人一人の性格は大体掴めるようになってきた。

けれど、凪だけは何を考えているのか、まだあまりよく掴めない。


ふと、凪の持っていた紙皿の中を見ると、極端に人参だけが隅に追いやられていた。

他の野菜たちや肉から引き離されたような人参に、たまたまではなく故意的に隅に追いやられたのだとわかる。


「……もーらいっ」


私は手を伸ばすとかわいそうな人参を箸でつまみ、そのままぱくりと食べた。

普段あまり表情の変化がない凪も少しびっくりしたのか、「あ…」と小さく声を漏らす。

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