麗しの彼を押し倒すとき。


「おいしい!」


そう言って波留くんを見ると、「よかったね」また少し困ったように笑う。

その笑顔に、彼の言葉の続きをまだ聞いてなかったことを思い出した。



「そう言えば…さっき何か言おうとしてなかった?」

「ん?…あぁ、柚季っちってそういうとこあるよねって」

「そういうとこ?」


言葉の意味がいまいちよくわからなくて、波留くんの顔を覗きこむ。


「こういうこと」


そんな私の姿を見て焼き鳥の串を軽く持ち上げると、今度は楽しそうに笑った。



「焼き鳥?焼き鳥がどうかした?」

「まぁ、柚季っちは気付かないよな。要するに小悪魔ってことだよ」

「……小悪魔?小さい悪魔?」


意味がわからない。

こういうとき残念な自分の頭が憎くなる。私の脳ミソはこの先の人生、ちゃんと役に立ってくれるんだろうか。



「まぁこいつの場合素だから、その辺の女より厄介だよね」


もんもんと考えていると、なっちゃんが同じように焼き鳥をかじりながらこっちに歩いて来た。

話の欠片しか聞いてない筈なのに、その口ぶりから波留くんの言っていることが理解できたらしい。


普段ペラペラと口が回るのは、やはり頭がいいからなんだろうか。

自分とのあまりの差に怒りの矛先がみつからなくて、世の中不公平だと叫びたくなる。

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