鐘つき聖堂の魔女


「それというのもなんなのだけど、あなたにお願いがあるの」

「お願い…ですか?」

不思議そうに首を傾げる少女。その表情に怯えの色がないことがリーシャの背を押した。



「私に……料理を教えてほしいの」

「料理をですか?」

「私料理をしたことがなくて、最近まではお昼は毎日宮殿だし、夜は外に出たり、食べなかったりすることが多かったの。今は料理を作ってくれる人がいるんだけど、その人も働いているから一人だけ料理をさせるのは申し訳なくて…」

「つまりその人のために料理を覚えたいと」

小さく頷いたリーシャに少女はニヤリと笑う。



「ずばり料理を作ってあげたいお人は男性ですね」

「ッ…な、なんで分かるの!?」

「だってそんなに顔を赤くしながらおっしゃるんですもの。誰が見ても好きな人に振舞いたいんだな、と思いますわ」

「す、好きな人というわけじゃないの!だからといって嫌いでもないんだけど…えっと…」

顔色を変えながら焦るリーシャに少女はとうとう声を上げて笑い始めた。




「私皆さんのこと誤解していたのかもしれません。こんなに近くても皆さんのお顔を見たことはなかったので、こんなに表情豊かで可愛らしいお顔をされるとは知りませんでした」

「魔女は怖くないって少しでも分かってもらえたなら嬉しいわ。それで…さっきの件は受けてくれるかしら」

リーシャがおずおずと申し出た言葉に少女は少し考えるそぶりを見せ、リーシャの視界からいなくなった。


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