鐘つき聖堂の魔女
やはり駄目だったかとリーシャが諦めかけたその時、厨房と黒曜の間を遮る扉が音を立てて開く。
厨房から出てきたのはもちろん少女で。少女はリーシャの前まで歩み寄り、にこりと笑った。
「私でよろしければお受けします」
断られると思っていたリーシャは思わぬ返答に歓喜する。
「ッ…ありがとう!とても嬉しいわ。えっと…」
「メリアーデと申します」
「私はリーシャよ。これからよろしくお願いします、メリアーデ先生」
メリアーデはリーシャの尊敬のこもった呼び方に照れ、“先生”はとってほしいと申し出た。
結局その場は、年下なのだからと引かないメリアーデにリーシャが折れるかたちとなった。
「それで、いつから始めますか?」
「私はいつでも。休日でも平日でもいいわ。ただ、平日はあまり遅くならない時間帯が良いの」
ことはライルに気づかれないよう進めなければならない。
ただでさえ帰りが遅くなってライルの帰宅時間とかぶると厳重注意をくらうのだから。
「分かりました。では明日の夕方から始めましょう。宮殿では目立ってしまうので、私の家に来ていただけますか?その方が気楽にできるでしょうし」
「家に行っていいの?」
リーシャはメリアーデの申し出に驚きを隠せないでいた。
会ったばかりで、しかも魔女である自分を家に上げることは抵抗ないのだろうかと。
しかし、リーシャの心配は杞憂に終わった。