鐘つき聖堂の魔女


「もちろんです。私一人なのでお気になさらず」

気持ちよく笑うメリアーデを前に、ふとライルとの同居生活の始まった日のことを思い出す。



(あの時の私もライルを疑っていたけど、ライルが悪い人には思えなくて結局同居を許したんだっけ)



きっとメリアーデが申し出を受けてくれたのも、信用してくれたからだと思いたい。

そして、その信頼を裏切らないためにも極力迷惑をかけないように努めたい。

魔女と付き合いがあることが周りに知れれば、思わぬ余波がメリアーデを襲うかもしれない。

リーシャは浮かれる心を静めつつ、メリアーデの信用を裏切らないよう努めることを誓った。

それからというものメリアーデとのレッスンが始まり、平日はリーシャの勤めが終わってから、休日は朝からメリアーデの家に通う日々が始まった。






「おじさん、こんにちは」

「お!リーシャちゃん今日も来てくれたのかい」

「えぇ、また欲しい食材があって」

メリアーデとのレッスンにはいくつかの決まり事があった。

そのうちのひとつにレッスンで使う材料は自分で用意すること、という決まり事がある。

メリアーデ曰く、自分の目で食材を見極め、選ぶこともレッスンのひとつという。

例えばニンジンは色が濃く、鮮やかで表面が滑らかでつやのあるもの、トマトはヘタ近くにひび割れがなく、全体的に固く丸みのあるものが良い。

これらおいしい食材の選び方を教えてくれたのはもちろんメリアーデだ。

今やリーシャはレッスン初期に教わった食材の選び方について書かれたメモを片手に、買い物に来る機会が多くなった。


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