鐘つき聖堂の魔女
「そうだけど…やはり心配でしょう」
「ドナさんのライル様への忠誠心は素晴らしいと思いますが…少し妬けますね」
「え?なに?」
ぼそりと呟いたノーランドの言葉が聞き取れずドナはノーランドにもう一度促す。
一瞬寂しそうな表情を浮かべたノーランドだったが、すぐにいつもの柔らかい笑みをつくる。
「いいえ、何でもありません。しかし、あのライル様が他人と生活を共にするなんて信じられないと思いまして。本国の皆に知らせてあげたいくらいです」
「そんなことしてみなさいよ。国中の女から悲鳴が聞こえてくるわよ」
「それもそうだ」
くつくつと喉を鳴らして笑うノーランドにドナもつられて笑う。
「けどあの魔女を利用するなんて手ぬるい真似をしなくても、ちょっと脅せば宮殿に忍び込むなんて簡単なのに、ライル様は何故それを良しとしないのかしら」
「それは愚問ですね」
「そうだな」
ドナの物騒な発言はさて置き、ノーランドとヒュクスは答えに至った様子。
対するドナは本当に分かっていないのか、疑問符を浮かべる。
「お前この先苦労するぞ」
「覚悟してます」
ヒュクスに肩を叩かれたノーランドは苦笑いを浮かべ、未だ考えを巡らすドナを優しい目で見つめた。