鐘つき聖堂の魔女



「リーシャ?急に黙り込んでどうした?体調が悪いのか?」

部屋着に着替えたライルがいつの間にか目の前にきており、リーシャは我に返る。


「ううん、なんでもない」

「ならいいけど」

ライルは腑に落ちなかったが、リーシャが頑なに隠そうとしている雰囲気が伝わってきたため、それ以上は聞かなかった。



「今日は煮物にしようと思う。すぐ作るから座ってて」

「手伝う」

「いいの?」

珍しいリーシャの申し出にライルは驚いて振り返る。

ライルがあまりに驚いた様子だったので、リーシャはムっと頬を膨らませながら頷いた。




「じゃぁ、途中からお願いしてもいい?」

ライルの言葉にリーシャの表情がパッと花やぎ、喜んだのもつかの間、任されたのはライルがつくった煮物を煮詰める作業で、リーシャは尚更へそを曲げた。

鍋を焦がさないように回すなど誰でもできる様な作業を任されたことが不満だったのだ。



(私だってもう包丁の使い方は慣れてきたし、メモさえあればスープも作れるんだから)


小さな主張を自分の心の中に留めておくのは、いつかカルデアをライルにつくる日まで練習を積み、メリアーデが作ったようなおいしいカルデアをつくってライルに褒めてほしいからだ。

しかし、鍋番に回されたということは、ライルはリーシャのことを猫の手ほどとも思っていないのだろう。

少し悔しい想いをしながら鍋を焦がさないように回していると、ライルがふと思い出したように声を上げる。


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