鐘つき聖堂の魔女
その優しさはスープとともに染み渡り、リーシャの体と心を温めた。
「どう?美味しい?」
ライルはそう聞くが、売り物なのだ。不味いわけがない。
けど…――――
「うん……けどライルが作ってくれたスープの方が美味しい」
リーシャが何気なしに呟いた言葉にライルの動きがぴたりと止まる。
そして次の瞬間、ライルは口元を手で覆い、視線を逸らした。
無意識に発せられた言葉は時に発した本人の意図に関わらず受け手に衝撃もたらす。
それは無自覚であるが故に質が悪いものだった。
「そういうこと他の人にも言ってるの?」
「……?言ってないよ?だってご飯はいつもライルが作ってくれるじゃない」
ライルは質問の意図とは違う答えが返ってきたことにクスリと笑い、動揺していたことが馬鹿らしくなった。
場が和むような笑みを見せたライルにリーシャは意を決して口を開く。
「最近…仕事は順調?」
「リーシャが仕事のことを聞くなんて珍しいね」
「ライルの仕事のことあんまり聞いたことなかったなと思って」
遠まわしに話題を振ってみたが、この流れで仕事の話題は不自然だっただろうか。
リーシャは焦る気持ちを抑えつつ、なるべく自然に振舞おうと心を鎮める。
「仕事は順調だよ。客足も伸びてきたし、店長もお客さんが増えて喜んでる」
「お客さんってどんな人がくるの?」
そう聞いたリーシャの顔は少し強張っていた。
しかし、ライルはリーシャの微妙な変化に気付くことはなかった。
「夜は仕事上がりの憲兵や、常連客が飲みに来るよ。昼は女性の方が多いかな」
「そう……」
リーシャの声が急激に落ちる。