鐘つき聖堂の魔女


「あれ?リーシャは殿下つきの侍女じゃなかったっけ?」

もちろん知っていたが、わざとらしく驚いたふりをするライル。

リーシャはおそらく皇帝の侍女だといったことを忘れていたのだろう。焦りの色を顔に浮かべて取り繕う。



「そ、そうよ。今のは聞いた話」

「そっか。殿下つきの侍女はどんな仕事をするの?」

ライルの問いかけにリーシャはロードメロイについて世話をする侍女の仕事を頭に浮かべた。



「どんなって…普通の身の回りのお世話よ。食事の準備や、服の管理、あとは湯あみのお手伝いとか」

「ふーん…そう」

必死で思い出そうとしているリーシャはライルの声のトーンが下がったことに気付かない。

ライルは自分の胸の内にもやがかかったような黒い感情が湧いたのが分かった。

しかし、リーシャから内部情報を聞き出そうとしている今は非情になる方が楽だった。

ライルは一瞬見せた不快な色をすぐに消し、いつもの笑顔を張り付ける。




「皇帝はどんな人?ネイアノールではあまり評判は良くない人みたいだけど」

「ロードメロイ様は…良い人よ。希望すれば侍女を宮殿に住まわせてくれるし、ま、魔女にだって優しいし」

リーシャの視線、声色からそれが嘘だということは分かった。

侍女を宮殿に囲うのは大体予想がつくし、魔女を優遇するのは戦争に利用するためだろう。



「ネイアノールからの評判が悪いのは、過去にいざこざがあったから、あまりよく思われていないのかも」

「三年戦争のこと?」

ライルの問いにリーシャは黙って頷く。


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