鐘つき聖堂の魔女
「おじいさん、おばあさん、木札は確かにここに?」
「置いたつもりじゃったんじゃがな、わしらが忘れとったのかもしれん」
「そうですね。珍しいお茶を揃えているお店があると聞いたものですだから食後に飲みたいですねと、おじいさんと話していたんですけど、きっと立ち上がった時に置き忘れたんでしょうね」
老夫婦はお互いの顔を見やり、困ったように笑うだけだった。
付け入る隙を見つけた男はすかさず老夫婦の後に続く。
「ほらみろ。そいつらもそういってることだしよ、ここに俺らが座るのは問題ねぇじゃねえか」
「じゃぁなんで置き忘れた木札がないだよ!」
「そんなこと俺たちが知るか」
目つきの悪い男が細い目をさらに鋭くさせて冷たく言い放つ。
「おいガキ、いい加減にしねぇとマジで痛い目見るぜ?」
食い下がらないジャンに痺れを切らしたもう一人の男がジャンの胸倉を掴み上げる。
苛立ちをぶつけ、凄んだ男にリーシャは慌てて二人の間に入った。
「ま、待ってください。まだ子供なんです、許してあげてください」
リーシャの声が震える。面倒事にはあまり関わらないようにしてきたためこういった時の対処には耐性がない。
「お兄さんや、この子を許してやってくれんか」
「私たちはもういいですから。別のところに行きます」
リーシャに続いて老夫婦がそう続けると、男は苛立たしげ舌打ちをし、ジャンの胸倉を乱暴に放した。
すかさずリーシャはジャンの腕を引き寄せ、男たちから遠ざける。