鐘つき聖堂の魔女
「リーシャが戻ってきたら頼んだものはまた暇を見て貰いに来ると伝えてくれ」
面食らうライルをよそに、オリバーは自分の役目が終わったとばかりに帰っていく。その後ろ姿は心なしか嬉しそうに見え、ライルは複雑な気持ちだった。
「おお、そうじゃ」
オリバーが何かを思い出したように踵を返す。
「背中のそれ、早く治ると良いのう」
「ッ!」
ライルはハッと息を飲み、目を見開いた。老人と言えどやはり帝国随一の魔術師。侮れない。
『良かったな主。敵とは認識されなかったようだぞ』
呑気な少女の声が頭に入り、ライルは苛立ちを通り越して溜息が漏れた。
「それで、リーシャは今どこにいる」
『モリアの鐘つき聖堂だ。途中で巻かれてしまった』
「闇の召喚獣がこの闇夜で対象を見失うとは聞いて呆れるな」
『追ってはいたんだがな。まぁいいではないか。小娘の居場所を突き止めたのだから』
つまり、追うのを止めたと。そういうことか。
ライルは今度こそ溜息を口にして再びモリアに向かった。