鐘つき聖堂の魔女


「罰を与える必要はない。リーシャが遅刻してきたのは初めてのことだ。一度目くらいは許してやろう」

「けどっ……」

昔からロードメロイはアリエラに甘いが、同じくらいリーシャにも甘い。

それが何故なのかリーシャには分からないが、アリエラのように騙されるつもりは毛頭ない。

何故ならリーシャはこの笑みの裏に隠されたロードメロイの本性を知っているから。




「アリエラ、私の決定が気に入らないのかい?」

「い、いいえ。そのようなことはございませんわ」

「ならわかってくれるね?」

有無を言わせない物言いに押される様にアリエラは腑に落ちてはいなかったが頷いた。

ロードメロイは笑みを深めてアリエラの頭を撫でる。




「聞き分けの良い子は好きだよ、アリエラ」

頭を撫でられただけで燃えるような嫉妬心を払拭できるのだ、アリエラの性格も単純にできている。

そんな口外できないことを頭に浮かべていると、「リーシャ」とテノールが低く響く。



「二度目はない。わかっているな?」

「…はい」

リーシャはロードメロイが垣間見せた冷たく底光りする瞳にゾクリと身の毛がよだち、過去の嫌な記憶がよぎった。


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