鐘つき聖堂の魔女


そして、その立役者として活躍したのがヴァイスだ。

ヴァイスは学問においては試験という試験で落第点を叩きだすほど壊滅的だったが、戦における戦術においては冴える男だった。

その戦術は決して論理的ではなく、戦場において独特の嗅覚を持っているというべきか、兎に角ドルネイが侵略を図った国々を制圧した陰にヴァイスの功績もある。



「昨夜未明、我が国とネイアノール国との国境付近で、魔女の敷いた索敵網に引っかかった輩がおりました」

ニヤリと笑ったヴァイスにリーシャは思ったとおりだと呆れる。

しかも今回は国内ではなく他国が絡んでいるため、ヴァイスがこの件を報告したくてたまらなかったのも頷ける。



「国境警備にあたっていた魔女によると、索敵に反応した直後、仕掛けていた罠の発動により一度は捕獲したのですが、何らかの原因によって魔法を破られ、逃したとのことです」

ヴァイスの報告に閣議の間がどよめきの声でざわついた。


「魔法を破った?」

「国境警備はそこそこの力を持った魔女を置いているはずだろう」

「おっしゃるとおりで。国境警備にあたらせているのはどれも優秀な魔女ばかり。しかし、魔女数名がかりで仕掛けた索敵捕獲魔法の全てが消滅されておりました」

アメリアが驚くのも無理はない。魔法とは魔女だけに与えられた不思議な力であり、魔法障壁や捕獲魔法を破るのはそう容易なことではないからだ。



複数の魔女による魔法なら尚更のこと、もしそれを破ったというなら…。


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