鐘つき聖堂の魔女
「ロードメロイ様、そろそろ…」
「そうだったな。今日はこの後ブルックス地区の貴族たちと晩餐会だった。ヴァイス大佐、他に報告事項がなければ終わりにしたいんだが?」
「えぇ、どうぞ。他はこちらで処理します」
結局、今日もリーシャは一言も口を挟むことが出来ず会議は終わった。
何も言わず逆らわず、目を逸らすことで生きてきたリーシャは従うことでしかこの場にいることは叶わない。
「先ほどの件は抜かりなく行え」
ロードメロイは厳しい表情でそう言いながら椅子から立ち上がり、ヴァイスに向けた表情とは打って変わって柔らかい笑みをつくってアリエラに視線を移す。
「さてアリエラ、晩餐会には君も同行してくれるかい?」
「もちろんですわ。御身は私がお守りいたします」
「君がいてくれると力強いよ」
甘い雰囲気を醸し出す二人を冷めた目で見つめるリーシャ。
少なくともロードメロイの表情と言葉には感情がこもっていないように感じられる。
ロードメロイはじっと自分たちを見つめるリーシャに気づき、扉の前でこちらを振り返る。
「君ももっと力をつけてドルネイの為に尽力してもらいたいものだな、リーシャよ。私は好意で君たち魔女を引き取っているわけではないことを忘れないように」
「善処します…」
リーシャは悔しそうに顔を歪め、小さな声で答えた。
去り際、勝ち誇ったようなロードメロイの笑みに胸がむかむかと嫌悪を訴え、ロードメロイが出て行った扉を睨んだ。