鐘つき聖堂の魔女
「エンダイブと紫キャベツ、トマトか」
「エンダイブ…紫キャベツとトマト?そんな名前だったんだ」
不思議そうにサラダを見つめるリーシャにライルは唖然とする。
正直なところライルはリーシャの無知さ加減をなめていた。
エンダイブならまだしも、キャベツやトマトを知らないとは少し頭を抱えたくなった。
「これはどこから?買い置きはしてなかったはずだけど…」
「朝ひとっ走りして朝市に行ってきて、余りものの野菜を分けてもらったんだ」
「朝早くからモリアまで行ったの?」
「あぁ散歩がてらね。朝食を作ろうかと思ったんだけど卵しかなくて、どうせなら市場まで行ってみようって思って。モリアの朝市は賑やかだったよ」
早起きにも程があるだろう。今が八時でモリアまで往復しても約二時間。
そうするとライルは六時に起きてモリアに向かったということになる。
しかし、朝早くから朝市に行って余り物の野菜をもらってきたとはなかなか度胸がある。
否、ライルの場合は市を歩いているだけでおばさんが野菜を持たせてくれそうなものだから、そんなことは朝飯前なのかもしれない。
リーシャはクローゼットの奥の小箱を取出し、中から銀貨を五枚ライルに渡した。