鐘つき聖堂の魔女
「とりあえず今週の分はこれで足りますか?」
「あぁ、十分だよ」
ライルはリーシャから銀貨を受け取ったが、溜息をついて肩を落とす。
「それにしても情けないな。男の俺がお金をもらうなんて」
「しょうがないじゃない。財布を入れた荷ごと盗まれたんだから」
「そうだけど…。まぁ男として譲れないこともあるんだ」
そんなことを言うが家事はどうなのか。女は家を守り、夫のために家事をする。
ライルはそれを率先してやっているというのに、生活費をもらうことに関しては情けなく思うのだから、どこかずれている気がする。
「来月、給料貰ったらちゃんと返すから」
「一人分でいいですからね」
「分かった。後払いになるけど家賃もちゃんと払うから」
「家賃は要りません。私もこの家はただでもらったも同然だったし、ライルは家のことをしてくれるんでしょう?」
「あれは無一文の時の話であって…いや、今もまだ無一文なんだが…」
自分の言ったことに突っ込みを入れるライルにリーシャは小さく笑った。
「家主の私が食事代だけでいいといってるんだからいいんです。私に家賃を払うだけのお金が出来たなら祖国に帰るための資金に充ててください」
リーシャが言ったその言葉にライルは二の句が継げなかった。
深い溜息をつき、降参だというように肩を落とす。