鐘つき聖堂の魔女
「それを言われたら俺も何も言えないな」
「じゃぁ決まりですね」
「不本意だが、結局のところリーシャへの負担を減らすためにはそれが一番いいんだろうな」
「そういうことです」
「俺はせいぜい如何に生活費を節約できるかに徹することにするよ」
リーシャはライルに舌戦で勝ったようで気分が良かった。
同じ家で生活するうえで主導権を握るのは大事なことだ。
幸先良いスタートが切れて良かったと思ったのもつかの間。
「それとリーシャの偏食をなおさないとな。かなり苦戦しそうだが、料理長としては腕が鳴るよ」
ニヤリと笑ったライルにリーシャの顔から笑顔が消え、固まる。
目の前に置かれたエンダイブとかいう不思議な野菜を食べなければならないのだといけないのだと思うと気分は急降下する。
「そこは頑張らなくていいです」
「なら野菜を摂る必要性について三時間は語るけどいい?」
圧迫感のあるにっこり笑顔にリーシャはごくりと生唾を飲む。
そして、お皿に盛られたサラダを見つめ、フォークでエンダイブとやらをすくいあげた。
「いただきます」
「良い子だ」
口に入れたエンダイブをゆっくりと咀嚼するリーシャをライルはまるで子供の成長を見守る親のような眼をしている。
それにしてもこのエンダイブという野菜は苦い。とっても苦い。