鐘つき聖堂の魔女
「ここ数日あの女の後をつけていましたが、毎日ある場所へ向かっているんです」
「宮殿だろ」
「ご存じだったのですか!?」
「あぁ、自分でそういっていた」
「では何故まだあの家にいるのですか。宮殿に通っているなどドルネイ帝国の魔女のほかありません」
ドナはライルがリーシャを魔女と知っていて一緒に暮らし続けていることに戸惑い、疑問を抱かずにはいれなかった。
「リーシャは宮殿で侍女として働いているといったんだ。帝国の魔女だという確証はない」
心配性のドナにリーシャが帝国の魔女と知って一緒に暮らしていると知れるとこれ以上面倒くさいことになるため黙っておくことにした。
「会って間もない…しかも敵国の魔女かもしれない者のいうことを信じるのですか?何かあってからでは遅いのです。今すぐあの家を出てください」
「いや、それは出来ない」
「何故ですか!?」
首を横に振って即座に否定したライルにドナは語気を強める。
「聞き出せる情報があるかもしれないからだ。宮殿に出入りできる者は少なくないのだからこれを利用しない手はない。それに、リーシャが魔女だというのなら尚更価値ある情報が手に入る可能性はあるんじゃないか?」
「それは…確かにこの国に強力な魔女がいるとしたら帝国の魔女の可能性は高いですし、その魔女を見つけ出すのなら宮殿に内通する者からの情報があれば事は早く運びますが…いくらなんでも敵国の魔女の家に潜むのは危険ではありませんか?」
「それは心配ない。彼女は俺の正体など微塵も気づいていないからな」
ライルはリーシャを思い浮かべて僅かに表情を綻ばせる。