鐘つき聖堂の魔女
「おじさん、味見ってできる?」
「もちろんだ。ちょっと待ってろ、生で食べれる野菜をカットしてきてやるよ」
ライルの問いかけにすぐさま応じた店主は店先の野菜をいくつかとって奥の台へ持って行った。
「味見するの?」
「きっとおいしくないだろうけど、後の参考になるから」
「分かった」
野菜嫌い克服のため、リーシャの意気込みも並ではない。これもライルのおかげだろう。
その後、リーシャは店主がカットした一口サイズの野菜を一つ一つ口に運び、味見をした。
その間ライルはリーシャがカットされた野菜を食べているのをじっと見ていた。
最後の一つを口に入れ、リーシャが飲み込んだのを確認するとライルは「うん」と納得したように口を開く。
「リーシャの苦手なものがだんだん読めてきた。自分でも色んな野菜を味見してみて分かったんじゃないか?」
「そう言われても、味付けされてない食材を食べても正直どれもおいしくなかったとしか…っごめんなさい」
リーシャは素直な感想を口にしたあと、店主の前であったことを思いだして頭を下げた。
「リーシャは本当に正直だな」
「まぁ確かに野菜嫌いの奴にとっちゃ生のままってのは逆効果だったな」
「すみません…」
苦笑するライルと少し残念そうな店主にリーシャは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「でも私自身も分からなかったのにライルは私の苦手なものが分かったの?」
「味見してたときの表情。苦手なものを食べてるときは眉間のしわが深くなった」
ライルの人差し指がリーシャの額の真ん中にあてられ、リーシャはぽかんと口を開ける。
自分でもまったく意識していなかったためだ。