鐘つき聖堂の魔女


そんなに有名な劇団の演目なら見てみたい気もする。

何よりリーシャが珍しく目を輝かせて懇願するようにも見えたためライルの心は決まっていた。



「じゃぁお言葉に甘えて行ってみようか」

「うん!」

リーシャの嬉しそうな返答にライルもつられるように笑う。

買い込んだ荷物は店主に預け、リーシャとライルは聖堂前広場に向かった。

聖堂前広場に着くと、すでに広場は人で埋め尽くされていた。

ライルはリーシャの手を引きながら舞台の真正面まで移動し、なんとか開演までに間に合った。



「お集まりの皆様ごきげんよう」

舞台袖から出てきた小柄な男性が小さく会釈する。

タキシードに蝶ネクタイ、長い帽子をかぶり、片眼鏡をかけたルブタ劇団の団長の登場に広場の喧騒が消える。

冒頭に団長から告げられる演目を聞き逃すまいと耳を澄ませているのだ。

シンと静まった観衆を前に団長はしわだらけの顔をほころばせ、体を支える杖で仮設舞台をトンと一回叩く。




「本日は我がルブタ劇団の劇にお越しいただきましてありがとうございます。本日皆様にご観劇いただくのは、かくも麗しき姫と呪われた王子のお話でございます」

団長の告げた演目に観衆は歓喜に沸く。それほどその演目は人々の間で人気だった。



「とても人気な演目みたいだね」

「うん…そうなの。たぶん皆が一番大好きな演目なんじゃないかな」

声を潜めて耳打ちしたライルに、リーシャは声を落として他人事のように答えた。

ライルは怪訝そうな表情をしたものの、トンという杖の音につられ前を向く。


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