上司と上手につきあう方法【完結】
たいしたことじゃない、か。
なんだか部長らしいというかなんというか……。
きっと彼なら、何が起こっても「大したことじゃない」で済ませそうで。
たとえば、私みたいな状況に陥ったとしても、動揺することもないんだろうなって思ったら、なんだか妙におかしくなってしまった。
「――平尾?」
部長が怪訝そうに私の顔を覗き込む。
彼は背が高いから、ほんの少し背中を丸める感じで。
顔を上げると、メタルフレームの奥の涼しげな瞳と視線がぶつかった。いつもはデスクに座る彼を見下ろすばかりだから、初めて知る距離感だった。
その瞬間、私は何を思ったのか――
いや、朝陽のせいで妙なテンションになっていたのかもしれない。
「部長、一緒に飲みませんか? 飲みたい気分なんです」
なんて、口走っていたんだ。