上司と上手につきあう方法【完結】
どうしよう。
さすがに部長に向かって、彼女にフラれたんですよね、なんて言えないよ。
私だってまだまだここで働いていたいもん。
いずれ役員になることが決定しているような彼に、不利なことは絶対に言えないっ!
よし、しらばっくれよう。
何の証拠もないんだから!!
「あ、あのですね、本当に、それだけでして……」
「――平尾、唇、どうした」
「ふええっ!?」
そうくる!?
部長、私のこと揺さぶりかけてる!?
思わぬツッコミに、大きく動揺する私。
慌てて手のひらで唇を覆っていた。
あの乱暴なキスで切った唇。まだ実は治っていなくて。
いつもはしっかりとグロスをぬるけれど、透明な薬用リップだけで今日は過ごすつもりだった。
事故でしたキスのことなんか、元カノ話以上に言えないっつーの!