上司と上手につきあう方法【完結】
そう、私だってわかっていたけれど、何を言ってるんだろうと思ったけれど、止められなかった。
「だから、誰かに側にいてほしいんです」
「――」
「部長も、寂しいんじゃないんですか」
私の言葉に、ピクリと、彼の眼鏡の奥の秀麗な眉が寄せられる。
「――平尾、お前……」
一瞬彼が怯えたように見えたのは、私の気のせいだろうか。
まるで彼を脅しているような錯覚を覚えながら――
(同時に妙な興奮を感じていたことは否定しない)
私はゆっくりと、バッグを肩に抱えたまま、彼のもとへ歩を進めた。
「――たぶん、一人で泣くよりずっとマシです」
「ッ……」
その瞬間、部長の表情がくしゃりと歪んだ。
私はゆっくりと手を伸ばし、部長の指の先をつかむ。ひんやりと冷たい指先だった。