天使みたいな死神に、恋をした

 左側には真っ赤な川が遥か彼方まで続いていて、右側には真っ黒な森が繁っている。川は流れているのに音もなく、森は揺れているのに同じくなんの音も立てない。

「どこに向かってるの?」
 
 いっこうに景色が変わらない場所をくるくると回っているようで、なんか狐につままれた気分だ。

「どこに向かう? もう着いてますよ」

「どこに?」

「どこってここに」

 さっきから永遠と歩いているだけにしか思えない。同じところをくるくると回ってると思うのは景色がぜんぜん変わらないからなんだけど、それにしてもこんなに同じようなところばかりってのは、おかしい。


「同じように見えますが実は違うんですよ」

「どういうふうに違うの? 同じところにしか見えないよ、なにもかもがずっと変わらないし」

「違うとそう思えば違うように見えるものなんですよ。同じところだと思っていても川の水の流れ、森の葉っぱの一枚をとっても同じようなことはありませんよ」

 うまくはぐらかされたようにしか思えないんだけど、それでもまだ無言よりは話していたほうが心持ちいいか。

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