天使みたいな死神に、恋をした
思いきりそれを地面から引き抜いた。
オイル状の黒いどろどろを頭からすっぽりとかぶり、口のところだけが赤く丸く開いていた。
空気を一生懸命吸おうとするように、大きく開かれた口は不気味なほどに真っ赤で、でも生きようとしているようにも見えた。
アンジュラはそれを雑に引き抜くと、いつの間にか近くに置かれていた瓶(かめ)の中に頭から突っ込み、鎌についた黒いどろどろを取り払った。
「あぁ……そうですか、なるほど、よくわかりました。あなたはそういう風に人を殺めてきたんですねぇ。全くどうしようもありませんね」
何がどう分かったんだか知らないけど、瓶の中からうっすらと肌色に変わった腕がにょきりと伸びてきたところで、
「はい、翠さんはここまで。これ以上は見ない方がいいでしょう。ここから先は私だけで」
と言い、私の『ちょっと待て!』という声はアンジュラの耳に届く前に宙をさまようこととなった。
真っ白くて骨のような手の平を私の顔の前で一度大きく振る。
私の意識(厳密には私自身が既に意識なんだけど)は考えることを阻止され、夢も何もない真っ黒い『無』の境地に落とされた。
次に目覚めた時は、アンジュラの家の黒いベッドの中だった。
急いで上半身だけ起きあがらせて辺りを見回したが誰もいない。
こんな目覚めの悪い場所は生まれて初めてだ。
いや、死んで初めてか? いや、まだこっちには完全に来ていないけど、とりあえず、
中途半端なところまで見せるなら、いっそのこと最初から見せるな! どうなるのか気になるじゃないか! と、心の底から言いたい。
暗い部屋の中の黒いベッドで一人で目覚めるものほど心細いいことはない。
あのあとあの腕の人はどうなったんだろう。ここから先は見ない方がいいって言ってたあれはなんなんだろう。
いつになったら帰ってくるんだろう。この家からは一歩たりとも出られないと言っていた。ってことは、待つしかないってことだ。