天使みたいな死神に、恋をした
私の目の前、数十センチの距離に入って来たアンジュラはやはり真っ白い絵の具を撒き散らしたように白い顔。
口元から覗く牙は鋭く輝いている。しかしその顔は怖さの中でも神秘的に輝き、決して美しい顔とは言い難いんだけど、悔しいかな美しいと言えてしまう。
「翠さんにひとつ、」
と言った死神は、
『あなたがた人間は洞窟の奥に顔を向けてくくりつけられた囚人であると、ちょっと前にこちらに来たとある方はいいました。あなたがたは背後のあかりによって壁に照らし出された薄く揺れる影を眺めることしかできません。そしてしばしば、その影が実在であると思い込んでしまうそうですよ』
となんとも答えようのないことを言った。
「ええと、だからそれって、人間界のことは幻だーと言いたいってこと?」
「はい、残念ながら事実です」
「……」
「つまり、死神の風上にもおけないという言い方は、翠さんがこちらがわに来たからこそ言える台詞なんです」
「やめてよ、そんなことない」
「なんだ、そうなんですか。私はてっきり翠さんは私と一緒になりたいと思い始めたのだとばかり思いました」
今度は私がきょっとんとする番だ。どこをどうしたらそういう風になるんだろう。
真っ白く不気味で綺麗な顔に見とれながらも、なぜそうなる? と、頭の中でいろいろな考えが周りつづけている。