天使みたいな死神に、恋をした
「それで、何を思い出したんですか?」
杖代わりにした鎌に体重を預け、
「私、あのバスに飛び込んだんじゃなくて、あのバスに乗ってたんだもん」
「乗っていた?」
鎌に預けていた体を起こし、私の話に耳を傾けるアンジュラの顔は相変わらず見えない。
「あのバスはうちの大学のサークルのもので、群馬県の合宿所に向けて走ってたところであの事故にあったの」
思い出した。
私は地味な絵画サークルに所属してる歴とした女子大生だ。
とりわけ絵が好きなわけでもない。でも、絵を見るのは好きだ。美術館のイベントには必ず出向くし、催しには必ず参加している。
絵には昔の人の心が入っている。どう思いながら、何を感じながら描いたのかを考えるのが好きで、その背景や時代情景を頭に思い描きながら見るのが好き。
うちの大学のサークルで何十年も恒例行事になっている夏の合宿に向けて、群馬県へ向かっていた。
思い出したよ。
なんでこんな簡単なことを忘れたのか...
「確かにあのバスはそういう目的でしたけどそれを翠さんが知っているということはちょっとまずいですねぇ」
「まずいって、何がまずいの?」
フードを深く被っているその顎らしきところに白い手を置いた。
「これはやっかいな問題になりそうな気がします」
アンジュラが面倒くさそうに肩を大きく上下させた。