天使みたいな死神に、恋をした

「なんか心当たりないわけ?」

 心当たり? そんなもん無い。

 首を振って『無い』をアピール。

 私にはやり残したことがある。だからこそ亮のところに戻るって決めたし。今まで聞いてきたあれやこれや、確かめたい。だから私にはまだこっちの世界に来るのは無理だ。



「うん、やっぱり無いと……あれ、ちょ、もしかしてまさか」

 ひとつ気付いたことがあった。

 自分の気持ちだ。この期に及んでいきなり頭に滑り込んできた感情。

「それだよ」

「うそ」

 亮の顔を見る。

 冷たくなりかけている私の手を一生懸命にさすってる。

 なんか言ってるけど、聞き取れなくなってきてる。

 耳元で何か言ってるんだけど、聞こえない。


「お前、もう諦めろ」

「やだ! 何ソレ。勘弁してよ」

「それはこっちの台詞だよ。勝手に想い始めて何言ってんだよ」

「やっぱりそうなの?」 そういうことなの?

「アンジュラ探してこいよ」

「どこにいるか分かんないよ! あんたの方が分かってるでしょ、いそうなところ! だったら」


「それじゃ面白くない」

 意地悪に笑ったその顔はもはや天使とは言い難い。
 そしてあの時気づかなかったことにしようと思ったこと、あの時解決しておけばよかった。


「自分でなんとかしてみろよ。この問題は俺には関係ない。むしろお前とアンジュラの問題で、どうなろうと知ったこっちゃないってもんだ」

「その間にさあ」

「そうなったらそうなっただろ。腹くくれ」

「……」


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