天使みたいな死神に、恋をした

 アンジュラが消えてった方を見る。

 何も無い。どこにも何もいない。アンジュラなんてどこにもいない。



 壁。壁しかない。



 あぁ、そういえば半分体に埋もれてた時もあったなぁって懐かしく思う。


「思うな」

 目の前に(顔だけは)きれいな天使の顔。

「……」

「わかんねーやつだな。早く行ってこいって」

「って、どこに行けばいいの」

「アンジュラんとこに決まってんだろうが。さっさと行かなきゃ手遅れになるぞ」


 まだそんな意地悪なことを言いつつも笑みは消さない。なんて意地悪な天使なんだ。


 くっそー、心臓(今のところ無いけど)ばくばくだよこれ!

 
「お願いしても、ここにはそれをかなえられる奴なんかいねーぞ」


 ほら、行け! と、お尻をキックしてきた。


 天使がキック。
 死神は逃亡。


「アンジュラ!」


 大声で叫んで、消えていったところへダッシュした。



 壁のところまで行くと、視界は一気に暗くなった。
 明るいところから暗いところに一気に移動したので目が慣れない。目を細め、額に手をかざす。


 アンジュラの家だって気付いたのは、ほんの数分後のこと。

 しかしだ、この家の主はどこにもいない。








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