天使みたいな死神に、恋をした

「翠さんはもう私のことが好きなんでしょう?」

「っ……」

 声が出ません。
 どんぴしゃで言ってきたこの死神に対し、絶句するしかない。

 それを、それは、それって、

 言っちゃだめな問題なんじゃないの。今後を考えたらダメなやつだ。
 
 私だって思うことはあっても言うの我慢してたのに。
 言霊だよ。ことばには言霊があるんだよ!

 最大限に目をひんむいて死神の目をよーーく見た。


 本気?


「私も好きです」
 

 突飛で一番ダメな告白に、更に息ができなくなる。

 苦しい。もがきたい。
 
 どうしたらいいんだろう。どうしたらこの状況から抜け出せるのか。
 
 動けない。
 
 このまま死神の胸に顔をうずめたら、私はきっと戻れないだろう。

 その胸に飛び込みたいような。でもちょっと待って。
 
 戻りたい気持ちと、もういいやっ、ここにいる。ていう気持ちが交互に波のように巡ってきて、どうにもならない状態に陥りそう。
 

 心地良いような、悪いような、罪悪感のような、後悔のような。

 
 それに加えて、時間がもう無いという焦る感じが、なんだかとても心地良くて、柔らかい時間の布を頭から纏って優しく絞められている。
 


 そんな感じになる。



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