天使みたいな死神に、恋をした
「どこに行きたいの?」
「何言ってるの。あなたもさっき聞いたでしょう。わたしたちが行くべきところだよ」
「……わたしたち」違和感を覚えた。
行くべきところとは、ルーインサイドの最後の審判が始まるところだ。
天国に行くにしても何度も審査を受けなければならないなんて、本当、お役所仕事と同じじゃん。としか言いようが無い。
天国に行くか、それとも違う場所へ行くかはここで決まるということだ。
天国というところは魂の寄り合い場所みたいなところだそうで、そこで自分の属するグループに戻って行く。生前どんなに親しくても、夫婦や運命の人だと思っても、魂のグループでは違うグループに属している場合がほとんどだそうだ。
そこで、なんていうかな、今まで送ってきた人生の総まとめをして、ひとつでもダメ出しが出るともう一回やり直さなければならないらしい。
また地球へ戻ってやり直すか、もしくはそれ以外の場所へ行くのかもここで決められる。
ということは、こっちに来てからもやることはたくさんあって、生前のことをいちいち考えている暇は無いってことだ。
すでに「次」が始まっているので、こっちへ来てからも前に進むしかないらしい。
でも、この人は自分が行くべき場所に行ったらどうなるのかを知っちゃって、だからこそ早くココを出たいって言ってるんだ。そんな感じにしか思えない。
「あのね、」
唾をゴクリと飲んだ。言うしかない。だって、この人、完全に私に成り代わって前に進もうとしているし。万が一このままこの人が先に進んでしまったら、私は百パーセントで死ぬことになる。そんなことになってはほんと、困る。
「あのね、私ね……本当はまだここに来てはいけないことになってるの。でもね、誰かが私のフリをして、成り済ましてここに残っているおかげで、私は戻れないんだ」
やばい! とも、どうして? ともなんとも言いようのない顔で私を見たこの人は視線がガチッと合った後、視線を一気に外に向け、ぶつぶつと独り言を呟き始めた。
このままだと聞く耳を持たなくなってしまう。
「名前は? 名前、なんていうの?」
「……」
「私は翠っていうんだけど、あなたは?」
「みどり?」
「そう。翠」
漢字を空に書き、様子をうかがった。
「……わたしも……」
「わたしも?」
「みどり」
「みどり? もしかして同じ名前?」
「でも漢字が違う。私は緑。色のほう」