守ってくれますか?
「飲まず食わずなんて、嘘です。冗談のつもりだったんです。
すみません。
あ、でも、寝てなかったのは本当ですよ?」

嘘をつく。

本当は、飲んでないし、食べてもない。
もちろん、寝てもいない。

でも、それは・・・

飲み物がなかったからじゃない。
食べ物がなかったからじゃない。
寝場所がなかったからじゃない。

・・・体が、心が、拒否をしたから。

飲むことを。
食べることを。
寝ることを。


・・・・でも・・・・・

それを、わざわざ王子様に言う必要などない。
優しい王子様は、きっと心配してくれる。

心配、させちゃダメだ。

だから、嘘をついた。
どうということのない、嘘をついた。

嘘をつくのには、慣れている。
守るためには、嘘もつくものだ。



「嘘をつくな。」

王子様の怒りのこもった声に、思わずビクッとする。

バレた?・・・・

「俺は嘘まみれの世界で生きている。そんな嘘、簡単に見抜ける。」

ああ、そうだったか・・・・

私は、王子様を見くびりすぎてたみたい。

「これは命令だ。ヒカリ。俺に嘘をつかずに、どういうことか説明しろ。」

命令、か。

王子様に買われた身の私は、命令には逆らえない。

「・・・・・わかりました。」
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