素敵彼氏の裏の顔
ずるいよね、こういう時だけ過去の栄光を持ち出すなんて。
どうせ、本気で戦うつもりなんて微塵もないくせに。
隼人はあたしを安心させようとしているのに、余計不安になってしまうあたし。
結局、新しい人生を歩んでいると言いながらも、隼人の本質は変わっていないのかもしれない。
「危ないこと、しないで」
思わずそう口にしていた。
淳ちゃんを助けてなんて言ったのは、他ならぬあたしなのに。
「隼人が傷つくと、あたしも辛い」
「美優……」
隼人があたしを抱きしめる力を強める。
硬い胸にしがみつき、お互いの鼓動を感じる。
小さく震えるあたしの身体を守るように、隼人があたしを包み込む。
利枝のこと、怪我のこと……
あたしの心は悲鳴を上げているのに、当の隼人がそれを癒してくれる。
心が温かくて安らいで。
もっと、ずっとこうしていたいと思った。