哀しみの音色
「………うん…」
彼女はうなずくと、ゆっくりと上を見上げた。
そして流れる、一筋の涙。
俺には彼女が、どうして泣いているのかわからなかった。
ただその涙が、あまりにも綺麗すぎて、かける言葉が何も見つからなかった。
「……ありがと」
上を見上げたまま、静かに発する言葉。
そして瞼を閉じると、何かをかみしめているように息を吸い込んだ。
そして、再び目が開けられたとき、俺は強い衝撃を受けた。
「じゃあね」
そう言った彼女の目は、大学で見た、あの時のように冷たい目をしていた。
「ちょ……待って!」
思わず、腕を掴む。
だけど振り返った彼女は、俺を大きく拒絶する瞳。
「ごめん。もう用はないから」
そして静かに俺の手を振りほどくと、そのまま立ち去ってしまった。