恋人たちのパンドラ【完】
「あったと言えば、あったし、なかったと言えばなかった」
悠里にとって壮介との再会は大事件だが、仕事上で言えば名刺をもらっただけで何も話は進んでいない。なのでこう答えるしかなかった。
「なんですか、それ?」
人懐っこい笑顔で悠里を見ながらほほ笑む直樹は今どきの男の子と言った感じだった。
少し明るめの柔らかそうな髪。前髪は少し長めだが本人は羨ましくなるくらい綺麗な二重の大きな目をコンプレックスに思っていて、それを少しでもごまかしたいらしい。
くるくると良く変わる表情は見ていてあきないし、屈託のない態度が上司や客先からも大事にされている。
そのルックスに似合わず、そつなく仕事をこなす直樹に悠里は実のところ助けられてばかりだった。
「そんなにボーッとしないで、さっさと仕事しましょ。それで今日は久々に飲みに行きましょ。なんだかしょげてる先輩に今日は僕がおごってあげます」
「しょげてるって、そんな風に見える?」
「えぇ、もし先輩に猫耳があればペタンって倒れてる感じです」
「ぷっ。猫耳って」
「だから、嫌な仕事はさっさと終わらせて今日は僕と飲みに行くんですよ!」
向かいの席同士で話をしていると
「ゴホン。その嫌な仕事を話してばかりいないで、さっさとやってくれ」
課長にそう言われて、直樹と悠里は
「すみません」
と声を合わせて謝った。
悠里にとって壮介との再会は大事件だが、仕事上で言えば名刺をもらっただけで何も話は進んでいない。なのでこう答えるしかなかった。
「なんですか、それ?」
人懐っこい笑顔で悠里を見ながらほほ笑む直樹は今どきの男の子と言った感じだった。
少し明るめの柔らかそうな髪。前髪は少し長めだが本人は羨ましくなるくらい綺麗な二重の大きな目をコンプレックスに思っていて、それを少しでもごまかしたいらしい。
くるくると良く変わる表情は見ていてあきないし、屈託のない態度が上司や客先からも大事にされている。
そのルックスに似合わず、そつなく仕事をこなす直樹に悠里は実のところ助けられてばかりだった。
「そんなにボーッとしないで、さっさと仕事しましょ。それで今日は久々に飲みに行きましょ。なんだかしょげてる先輩に今日は僕がおごってあげます」
「しょげてるって、そんな風に見える?」
「えぇ、もし先輩に猫耳があればペタンって倒れてる感じです」
「ぷっ。猫耳って」
「だから、嫌な仕事はさっさと終わらせて今日は僕と飲みに行くんですよ!」
向かいの席同士で話をしていると
「ゴホン。その嫌な仕事を話してばかりいないで、さっさとやってくれ」
課長にそう言われて、直樹と悠里は
「すみません」
と声を合わせて謝った。