かえるのおじさま
おろおろと両手を振っての否定の言葉を、ギャロは途中で止めた。

「ああ、でも……抱いて寝てもいいか?」

ぬくもりだけを冀うその声は低い大人の声でありながら、幼子のように頼りなく震えている。

突如、激しい慕情が美也子に湧いた。

この男は、なんて寂しい声を出すのだろう。
背中を丸めた姿は、なんと悲しみに満ちているのだろう。
それに、不安そうに下瞼をあげた、飛び出した目は……なんて愛しいのだろう。

彼の寂しさを癒せるのなら何を与えても惜しくはないと、美也子は思った。

だから彼の手を握る。

「一緒に……寝るだけなら」

少年のように無垢な輝きで、大きな目玉はくるりと光る。

「本当に?」

「嘘なんかついてどうするのよ」

「ふふふ」

「気持ち悪い笑い方しないの!」

今のいい方は少しきつかったかもしれないと、美也子は怯えて彼を見上げる。

だが、ギャロは一向気にする風も無く、美也子の指先をするりと撫でた。

「俺は幸せ者だ」

それは偽らざる実感。
今まで愛情のど真ん中にぽっかりと開いていた穴を、美也子は埋めてくれる。

少し突き放すような冷たい口をきいた後で、不安そうにこちらをうかがう眼差しが何よりも嬉しい。
それは、離れるつもりは無いのだと、千の言葉よりも雄弁に語る。
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