かえるのおじさま
これ以上はボロが出そうだ。

だから美也子は、ギャロの首を引き寄せて唇を重ねた。
微笑ましいリップ音が響く。

「ごめんね、ご覧のとおり、ラブラブなの」

「そんなおっさんに?」

「あら、私にとっては王子様なんだけど?」

それは偽り無い気持ちだ。

少しきつい言葉を投げた後も、彼はすぐに美也子を手放したりはしない。
ゆっくりと寄り添い、彼女の自己嫌悪を待ってくれる。
贖罪の言葉を一番近くで見守ってくれるのだ。

だから美也子は素直でいられる。
欠点も、弱い部分にも辛抱強く付き合ってくれる優しさを称えるのに、ほかの形容などあろうはずが無い。

ただ……この王子、少々照れ屋であった。

土緑色の頬が一気に高潮し、ぐるりと目玉を回す様は、トカゲ頭の男がさらに言い寄る隙を与えるのではないかと、美也子が危惧したほどだ。
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