かえるのおじさま
彼の視線は、並べられた景品の中でもひときわ立派な木彫りの熊にとまった。

それはギャロが特に丹念に彫ったもので、襲いかからんと立ち上がった熊が呻く喉鳴りさえ聞こえそうなほどの逸品である。
しかも大きさだって大人の膝まで程もあるのだから、すこぶる見栄えがいい。

これを獲って帰ったら、さぞかし自慢になるであろう。

「おじさん、一回ね」

小銭を差し出す子供に向かって、ギャロはにやりと笑う。

「坊主、よかったな。最初の客だから、サービスだ」

いつもより一本多くわっかを渡して、ギャロは木彫りの熊の鼻先をコツコツと叩いた。

「いいか坊主、コイツが欲しかったらここを狙うといい。だが、ちょっとしたコツがあってな、てめぇの目算よりも、心持ち上を狙うんだ」

アドバイス自体は親切だが、筵の上に無造作に並べられたように見える景品は、なかなかどうして、ギャロの経験と勘によって微妙な加減に配置されているのだ。
特に大熊は今回のメイン景品。看板代わりでもある。

難易度は高い。
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