かえるのおじさま
慌てて手を引っ込めるしぐさに、ネロがげたげたと笑う。

「まあ、俺の方だってただで引き受けてやるつもりはないさ」

「美也子は俺の女房だからな!」

「知ってるよ。あんたから女、寝とろうってほど恥知らずじゃないさ」

かたつむりがねっとりと笑う。本人はさぞかし爽やかな笑顔のつもりであろう。

「あんた、『マケテイグ』っていう、商売繁盛の魔法が使えるんだって? 俺の屋台にもそれ、やってくれよ」

「え、それは……」

「美也子、いいから引き受けておけ」

ギャロが笑う。

「それからな、ネロ、『マーケテイグ』だ」

「どっちでもいいや。ともかく、俺は目玉景品になるようなぬいぐるみを拵える。あんたはその魔法を俺の屋台にかけてくれる。ギブアンドテイクってヤツだ。気にするな」

ああ、こっちの世界の男は優しい、と美也子は思った。
それはここが母系社会であることも一因なのかもしれない。女を大事にする風潮が強いのだ。

そんな優しい男たちのなかでも特に優しく、誰よりも美也子を大切にしてくれる、ギャロ。
この夫君の傍を離れることなど、美也子には考えられなかった。
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