かえるのおじさま
何もしたく無い日もある。

ギャロは作業道具の箱を枕に、ごろりと寝転がってその日を過ごしていた。
馬車の進む振動が、ガタゴトと硬い枕を揺らす。

彼の指先には、美也子が先日作った不細工人形がつまみあげられ、やはり、馬車の振動でゆらりゆらりと揺れていた。

これを作った妻は、今日は子供たちの勉強を見るため、教室である座長の馬車に乗っている。
馬車が止まる夕方までを別々に過ごすのだ。

(やっぱり、美也子に似ているな)

目の前の人形は不細工だ。
見てくれは、愛くるしい美也子に似ていようはずも無い。
だが、きゅっと描かれた口元や、それでいて優しい目元など、作り手の気性そのままではないか。

(そうだ。俺は見てくれであいつに惚れたわけじゃないんだ)

確かに美也子は美しい。

醜怪種特有の肌は白く、頭のてっぺんだけに生えた長い髪を掻きあげるしぐさなど、艶やかだ。
それに、もう一箇所だけ、彼女の素肌を隠す愛くるしい毛束、そこはギャロだけのものだ。

(っと、いけねえ)

こういうときに男は不便だ。
ギャロは何気ない風を装って、ごろりと横を向く。

(美也子、俺はどうすりゃいいのかなあ)

彼がここしばらく悩んでいるのは、ギャロリエスの父親から聞いた他の兄弟たちのことである。
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