かえるのおじさま
そんな戸惑いに、座長は戸棚から出した干菓子を差し出して答えた。

「いいよいいよ。今は難しいことを考えなくていい。私が聞きたいのはもっと単純なことだからね」

「あの……舞台を台無しにした責任なら私にあります。どうか、ギャロのことは……」

「それも気にしなくて良いよ。こうなる事は全て計画のうちなんでね」

「でも、お客さんが怒ったんじゃあ……」

「ああ、みんなに入場料を返して大損害さね。今夜だけを見ればね」

座長は洋服の隠しから数枚の硬貨を出して、ちゃりっと美也子の前に置いた。

「今夜の出来事であんたたちのファンになったお嬢さん方からさ。女を掻っ攫いにくる男ってのは、女の子なら誰でも憧れるもんだろ?」

美也子には思い当たることがあった。この座長は副業を持っている。
< 30 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop