かえるのおじさま
それでも一般的な観念はかけ離れていないのだから、ゆっくり話せば伝わるところはある。

「あのね、いまどきの人はそんなに神様とか、信じてないの。そんなものに頼らなくても、十分な技術があるから」

「ああ、解かる。こっちでも似たようなもんだ」

「でも、お祭りは別なの。ずっと続いてきた慣習だし、楽しいことでしょ?」

「それも同じだな。普段は神様なんて信じてない連中も、祭りとなると浮かれてはしゃぐ。だからこそ俺たちの商売も成り立つんだがな」

もちろん、大きく食い違うところもある。

「ボンオドリってのも、豊穣の祭りなのか?」

「お盆はね、ご先祖様の魂が戻ってくるの」

「戻ってくる? 死んだ奴がか?」

「生き返ってくるわけじゃないのよ。死んだ人は魂になるの」

「良く解からないな。こっちじゃ死んだ奴は神様に吸収されると信じられている。それを拒んでふらふらしてる奴は、幽霊って言うんだ」

「そういう悪質なものだけじゃなくて、死んだらみんな、魂になるの」

「じゃあ美也子は、親父さんの魂に会ったことがあるのか?」

その一言が一瞬の沈黙を生み、美也子は俯いた。

「魂なんて……実在するわけないじゃない。そういう考え方だってだけよ」

「すまん……」

美也子を落ち込ませるつもりなどなかった。本当に純粋な好奇だったのだ。
< 60 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop