かえるのおじさま
自分だって幽霊の実在を信じていないのだから、そういった観念的な話だと気づくべきだった。

死んだ人間には二度と会えない。
どれほど会いたいと願っても。

(二度と会えない?)

……ならば美也子を異界に帰すのは、殺すようなものではないのか。

明るい笑顔にも、強がりの言葉も、そしてこの憂いを含んだ表情にさえ、触れることが出来なくなる。
それでも幸せならばいい、生きていてくれれば良いなんて嘘っぱちだ。

本当は手元においておきたい。
笑う顔も、怒った表情も、寂しい夜にそっと掌だけで伝えてくる涙も、全てを独占したい。

なのに、なぜこうも躍起になって、この娘を手放そうとする……?

『欲しい』と『壊してしまいたい』がない交ぜになった気持ち。その気持ちの向けどころがなくて、ギャロは戸惑い続けているのだ。

そもそもが、この気持ちを表す言葉さえ持ち合わせては居ない。

「ああ、まあ……買い物にでも行かないか」

代わりに口をついたのは、間抜けた言葉であった。
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