かえるのおじさま
「屋台の準備なんか明日にならなきゃできねえ。そこらを散歩でもして……」

それがギャロの気遣いだと悟ったのであろう。
美也子が明るい言葉を返す。

「デート?」

「ばばばばばば! 馬鹿な! ただ、いくら村ったって店屋ぐらいはあるだろうから、買い物を……それに、夫婦でデートなんて、おかしいだろう」

「あら、夫婦だって、二人で出かけたらデートでしょ」

「そう……なのか。じゃあ、一緒に出かけるのは……控えた方が……だって、本当の夫婦じゃ、ねえんだし」

ギャロの大きな目玉はきょとりと地面を見回した。

美也子はそんな彼の手を引く。

「冗談よ。私も買いたい物があるし、行きましょ」

「いいのか?」

「良いも悪いも、まだ買い物は不慣れだから、一人じゃ不安なの」

「そういうことなら……」

ギャロは美也子の手を握り返す。

「潰れてなけりゃあ、本屋があるはずだ。お前の好きそうな本があるといいんだが」

街場のようにぎっしりとではないが、ここは村の中心地であり、街道沿いにはそれなりに店が並んでいる。

手始めにギャロは、鄙びた食堂に立ち寄った。
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