かえるのおじさま
その腕に銀色の腕輪がちかりと光る。

黒ずみもなく、ただ使い込まれた金属の光沢は、銀ではあるまい。
太目の輪に輝石をはめ込んだだけのシンプルなデザインが、美也子の心をひどく捉えた。

席に着きながら、ギャロに訊ねる。

「ねえ、あの腕輪……」

美也子の記憶では、年配の女性なら大概がつけているものだ。

若い娘でも、時々つけているのを見かける。何か意味があるのかも知れない。

はたして、ギャロは目の縁を薄っすらと赤らめながら答えた。

「ああ、そうか、お前にも買ってやらなきゃならんな」

店の奥から温まった油に何かを放り込む音、ふわっと立ち上るにんにくの香気、それにおばさんの声。

「なんだい、あんたたち、そういう間柄なのかい」

「そういう?」

きょとんと首をかしげた美也子に、ギャロは搾り出すような声で告げた。

「既婚の……証だ。結婚腕輪ってやつだ」

「あ!!」

美也子の知る限り、こちらの世界では指輪はポピュラーなものではない。

吸盤がついていたり、獣然とした短くて太い指にあわせて指輪を作るのは、容易なことではないのだろう。
旅座仲間の装飾品も、耳や腕を飾るものが多い。
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