かえるのおじさま
吸盤のついた長めの指はぴったりと実を捉え、固定する。
硬い外皮の一点に押し当てられた錐の先端は、小気味良く回った。

それは決して力任せに押し入るような無礼は見せず、穴を穿ちやすい薄い部分を探り、試すようにゆっくりと、静かに沈みこんでゆく。

わずかな削りくずを落として、あっという間に錐は貫通した。

「すごい!」

素直な賞賛を贈る美也子に、ギャロが照れた笑いを返す。

「なあに、こんなもん……」

ネルが言葉尻を食う。

「な、な、すごいだろ? ギャロは器用でさあ、細工の親方に付いたのは二十歳過ぎてからなんだぜ。それでも、才能って言うんだろうな、あっという間にコツを覚えて、今じゃこの座の稼ぎ頭だ。だけど、道化の腕はもっとすごいんだぜ? 俺も舞台は一度しか見たことないけど……」

「ネル!」

ギャロが鋭くたしなめる。

放っておいたらこの男は、何から何まで話してしまいかねない。

過去のオンナの話でもされてはみっともないと、そう思ってのことだ。
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