かえるのおじさま
その自己犠牲の心構えこそが彼を名道化たらしめたのだろうと、今日では解っている。
だが、世間知らずの子供だった座長は彼を道化の弟子に推した。
その目論見どおり、彼は若くして一座の稼ぎ頭となった。
“その女がヒエロを訪ねてきたのは、ちょうどその時期であったと記憶している。
何年も離れて暮らしていたのだ。親子の対面はぎこちない。人払いをした馬車の中で、蛙目だけがぎょとぎょと動きながらお互いを確かめ合っている。
立会人として間に座っている私は、その無言にいたたまれなくなる。
それでもヒエロはこの日を楽しみにしていて、母と弟たちのために高級菓子などを買い込んでいたのだ。ただ一言それを告げて、甘えればいいのに……彼の目は、少し膨らんだ母の腹をしきりに気にしている。
「その、腹、は?」
やっとに搾り出した一言目は、それだった。
母親は気恥ずかしげに目を細めて項垂れる。
「再婚、したのよ」
「そ、か……おめでとうございます」
歯がゆいほどぎこちない。
「お、元気そうで、何より、です」”
だが、世間知らずの子供だった座長は彼を道化の弟子に推した。
その目論見どおり、彼は若くして一座の稼ぎ頭となった。
“その女がヒエロを訪ねてきたのは、ちょうどその時期であったと記憶している。
何年も離れて暮らしていたのだ。親子の対面はぎこちない。人払いをした馬車の中で、蛙目だけがぎょとぎょと動きながらお互いを確かめ合っている。
立会人として間に座っている私は、その無言にいたたまれなくなる。
それでもヒエロはこの日を楽しみにしていて、母と弟たちのために高級菓子などを買い込んでいたのだ。ただ一言それを告げて、甘えればいいのに……彼の目は、少し膨らんだ母の腹をしきりに気にしている。
「その、腹、は?」
やっとに搾り出した一言目は、それだった。
母親は気恥ずかしげに目を細めて項垂れる。
「再婚、したのよ」
「そ、か……おめでとうございます」
歯がゆいほどぎこちない。
「お、元気そうで、何より、です」”